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意思決定の支援

意思決定支援の前提

法的根拠による権利擁護

日本では憲法をトップとして、様々な法律で人々を大切にすることが保障されている。

  • 人権と社会正義の原理
  • 個人の尊厳と平等
  • 社会福祉の推進とサービス利用者の自己実現
憲法第13条・・・個人の尊厳・幸福追求
権憲法第14条・・・法の下の平等
憲法第25条・・・生存権の保障

エンパワメント

エンパワメントとは、もっている適応能力、潜在的能力、自己決定能力などのパワーを信じ、なおかつその可能性を引き出し、これらの力を発揮しながら主体性を回復していくことを目指す活動やケアです。
  • 利用者ご本人が社会のシステムに対し力を持った存在になる
  • 援助者も力を獲得する
  • 利用者ご本人の生きづらさとなっている制度の改革を促進する

自己決定における適切な条件

  • わかりやすい情報を受けられる環境
  • 意思表示が難しいご利用者へのコミュニケーションの支援
  • 情報収集と分析からニーズの判定へのご利用者の参加
  • ご利用者の同意と選択の尊重
  • 苦情を申し立てる権利の尊重と環境整備
  • 苦情に対する説明と具体的な対応

意思能力のとらえ方

民法での意思能力とは、「自然人が有効に意思表示をする能力のことである。」と書かれています。

有効に意思表示するということは、法律的で正常な判断能力を指します。おおむね10歳程度の判断能力がない場合には、意思能力がないとされることが多いようです。

イギリスの「意思決定能力法」

本人ではない他者が、たとえ本人にプラスになるような結果を偶然的に招いたとしても、不当なものとみなされます。たとえば、詐欺などの被害になりやすいということが、本人の意思決定能力を否定する根拠にはなりません。

・自分の状況を客観的に認識して、意思決定を行う必要性を理解する。
・状況に関連する情報を理解、保持、比較、活用する。
・何をしたいか、どうすべきかについて、自分の意思を決定する。
結果としての「決定」が尊重されるのではなく、「決定する」という行為までの一連に着目することが重要な視点です。

ベスト・インタレストとは

「ベスト・インタレスト」とは、本人にとっての「最善の利益の保障」です。判断基準はまさに本人です。本人のためになると一般的に考えられる「標準的」な結論を導き出すことは違います。
たとえご本人の行為が他者からは非効率的、非生産的、無意味、無価値と思われる行為であったとしても、それはご本人にとって大きな意味や価値があるのです。もちろん、行為が尊重されるためには、他者の権利侵害や福祉に反することが無いことが大前提となります。

意思決定支援の多義性

理念としての意思決定支援

  • 本人には能力があると推定する。
  • 本人を「権利行使の主体」として接する。
  • 本人の主観的な価値観を基準とする。
  • 本人の自己決定を支援者が支えることを主な目的とする。
  • 自己決定権によって図られる。

支援手法としての意思決定支援

  • 事実行為(食事・入浴・排泄など)を含めた本人の生活上のあらゆる意思決定行為に及ぶ。
  • 支援のための特別な法的権限も不要なことから、施設職員やケアマネジャー、看護師等の医療従事者、更には親族や知人等、本人の意思決定場面に現に立ち会う全ての人が支援者となる。

法制度としての意思決定支援

  • 国連の障害者権利委員会は「代行決定制度」から「意思決定支援制度」への進化を重要視している。
  • 現在の法定後見制度に代わる意思決定支援の仕組みを法制度化することが求められている。
  • 様々な領域、分野で先駆けとなるガイドラインを示し、検討する段階に入っている。

ホームレスの方を例にした意思決定支援の必要性

自己決定したと思われる一言、それは「自己決定における適切な条件」をもとに決定したことなのか注意する必要があります。意思決定のプロセスにおいて、適切な条件や支援があることで、新たな選択肢や可能性を発見できるはずです。

ホームレスの実態調査

厚生労働省による「ホームレスの実態に関する全国調査」が令和3年11月に約1170人を対象に行われました。

[質問①]今後望んでいる生活は?

・今のままで良い:約40%

[質問②]質問①の理由は?

・今の場所になじんでいる:約29%

・福祉の支援は受けたくない:約13%

・考える余裕がない:約4%

ホームレス環境下での自己決定の可能性

  • わかりやすい情報と良好な環境の中での決定ではない。
  • 情報・社会資源・各種制度など社会との距離が広がっている。
  • 社会の差別や偏見により、人とつながりにくい対人関係に対する心理状態。

本人の本当の自己決定を共に目指す

約40%も占めた「今のままで良い」という回答を、援助者(関わる全ての人)が本当の自己決定だと間違えて判断しないように注意が必要です。ここで必要になってくるのは先に述べましたエンパワメントの視点です。

エンパワメントは、その人自身の生活歴や環境、ホームレス状態になってしまった背景や精神状態など多角的なアセスメントから見出せるものです。その中で、ご本人ですら自覚しきれていない様々な要因を知ろうとする意識も重要です。

ホームレス環境下で制限されていた、主体性・選択肢・権利などを取り戻した先に本当の自己決定があるはずです。

まとめ

全ての人は判断力の程度に関係なく、重要な決定をするときに支援や配慮を受ける必要があり権利があります。
意思決定支援に疾病や障がいの有無は関係ありません。日常生活の中で例を挙げれば、マイカーやマイホームを購入する際には専門スタッフから適切な商品情報や、お支払い方法についてもいくつかの選択肢が提示されるはずです。まさか専門スタッフが、「決めるのはお客様自身です。」と言い捨て、無関心にはなりませんよね?
または家族や友人等に相談することもあるはずです。こうしたいくつかのプロセスを辿り最終的に自己決定が実現します。
「決定する」という結果だけを限定的に捉えるのではなく、「決定する」までのプロセス全体を対象とした支援や配慮を受ける権利があるのです。
・質問できる    ・断ることができる
・判断を保留できる ・話を蒸し返せる
意思決定支援は専門職だけが関わるものではありません。意思決定支援においての支援者とは、本人と関わる家族・友人・親戚など周囲の全ての人が意思決定支援者となります。
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