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福祉と教育とヒップホップ

福祉と教育とヒップホップ

レコードを自由自在に操るDJ。
マイクを持ちラップで盛り上げるMC。
DJとMCが作り出す音でダンスを踊るダンサー。
そして街を彩るグラフィティアート。
これら総合文化をヒップホップと呼び、今では幅広い国々、世代に浸透した。
「不良の文化」とマイナスイメージが根付いたのは昔の話。
アメリカや日本では教育や福祉にも導入され身近な存在となっている。

ヒップホップって?

ヒップホップの誕生

アメリカニューヨーク市の北端にあるブロンクス地区。50年前の1973年この地でヒップホップ文化は産声をあげました。この始まりは単なる子供の遊びだったと言われています。生誕依頼、黒人たちの社会的弱者とされてきた人々の声を代弁し、人種問題などアメリカの政治や社会を動かす原動力となりました。

 ヒップホップの4大要素

ヒップホップを構成する要素は、MC(ラッパー)、DJ(ターンテーブリスト)、グラフィティ、ブレイクダンスです。

  1. MC(ラッパー)
    司会進行を務める人を指し、MCは「マスター・オブ・セレモニー(master of ceremonies)」の略とされますが、ヒップホップではラップをする人のことです。MCと呼ばれているのは、語りで音楽の場をつないだり、会場を盛り上げる役目を担っているからです。
  2. DJ(disc jockey)
    DJは通常2台のターンテーブルを使い音楽を流す役割を担っています。DJの中にはターンテーブリストと言われる、高度な技術を駆使してターンテーブルを操る人たちもいます。
  3. グラフィティ
    様々な色のスプレー缶またはエアゾルを吹き付け、壁面などに描かれた絵のことをグラフィティと呼びます。
  4. ブレイクダンス
    ブレイクダンスとは主に床を使って頭や背中で回転したり、倒立などアクロバティックな動きを取り入れたダンスです。

つきまとう「不良」イメージ

ヒップホップはかつて「不良の文化」とレッテルを貼られていました。時に暴力や犯罪、薬物を肯定するような作品が社会との壁を作ってしまったのかもしれません。
また、ヒップホップが文化であるということの社会の無理解もあったと考えられます。
実は私もヒップホップ好きの一人で、まだ若かった2000年前後からハマりました。
当時は、ギラギラネックレスにデカい腕時計、頭にはキャップやバンダナ、服装はダボダボスタイル、ピアスやタトゥーなどイケイケな格好をした人達がヒップホップを引っ張っていました。
「不良」のイメージ、それは単なる見た目や勝手な印象が生み出したもので、「ヒップホップ」=「不良」とする考え方は改めるべき考えとなりました。
(とても元気のある方々がヒップホップに関わっていたのも事実です・・・笑)

「福祉と教育」×「ヒップホップ」

ヒップホップとスクールカウンセリング

ヒップホップ発祥の地であるブロンクス地区は貧困率が高く、家庭環境に課題を抱える生徒も多く、従来のスクールカウンセリングでは十分に彼らの内面にアクセスすることが非常に困難であったとされています。

カウンセリングにヒップホップを活かす活動では、作文のテーマのように「失敗を乗り越えた経験はある?」などの話題を生徒に投げかけ、それを生徒がラップにしていくものです。
少人数のグループで創作に取り組む過程がセラピーとして機能し、悩みや怒りをさらけ出すことが苦手な生徒さんたちも、クラブでリリック(ラップの詞)を書き始めたら自分にもできると気づくことが出来たと言います。

今から50年前の1973年、ブロンクスで誕生したヒップホップ文化が、社会背景により弱者とされた人たちの声を代弁したことと同じく、現代においても「声なき声」を発するためのツールとしてヒップホップが活用されています。

アメリカの「公衆衛生のためのホップホップ」

「公衆衛生のためのヒップホップ」という子ども向け教育プログラムがアメリカで行われています。

このプログラムは、ラップのリズムやグラフィティの視覚的イメージなどを使い、栄養学の基礎や運動習慣の知識を伝える取り組みです。カロリー計算や糖尿病について歌って踊ると自然と知識が身につき、子ども達が触媒となってコミュニティー全体にもその知識が広がり効果的であると考えられています。

ヒップホップ文化は、担い手たちの努力でアメリカ社会に広く溶け込み、着実に地域を支える文化になっています。

日本における「ダンス×フクシ」

東京パラリンピック開会式にも出演したダンスチーム「ソーシャルワーカーズ」は、ダンスでフクシをデザインしています。
創設者の方は、10代の頃に米軍基地で出会ったヒップホップが原点になり、療育の現場で働きながら活動していると言います。
開催されているワークショップには、ダウン症や発達障害など、多様な個性をもつ人々が集まり、とにかく褒めることを信条とし、数少ない「決まり」は「どんどん自分の好きなことをやる」。
創設者の方はこう話します。

「福祉施設では当事者が日々ルーティンに押し込められ、生活が過剰に統制されていることが多い。ダンスは人を規制から解放して、個々の違いを尊重して踊りへと昇華させる。そんな姿勢をヒップホップから学んだ。これが本当のノーマライゼーションですよね。」

引用:生誕50年 ヒップホップの現在地.NIKKEI THE STYLE.2023.1.29

まとめ

10年ほど前から中学校ではヒップホップダンスが必修科目に取り入れられ、テレビ番組などではラップの対抗バトルも人気になり、日本でもヒップホップ文化は着実に根づきつつあります。

ヒップホップが世界中で親しまれている理由として、誰もが身体一つで参加できるという軽やかさとも言われています。

貧困や差別に苦しんだブロンクス地区からヒップホップが誕生した経緯は、今誰もが参加しやすい新しいフクシの形として、ノーマライゼーションの理念や「声なき声を届ける活動」と共鳴し、ヒップホップ文化の価値がこれからも高まっていくものかもしれません。

参考文献
(1)生誕50年 ヒップホップの現在地.NIKKEI THE STYLE.2023.1.29
(2)谷口眞生子 ヒップホップについての諸要素 –ブロンクスからイタリアへと-

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