バイスティックの7原則
『フクシる』をご覧頂きありがとうございます。福祉のお仕事をされている方々にとっては必ず耳にしたことがあるであろう「バイスティックの7原則」。これを今回は振り返ってみたいと思います。「バイスティックの7原則」を一言で言うと、信頼関係の形成に必要な条件でしょうか。この原則をしっかりと捉えておくことが信頼関係を作るうえで重要であり、自分自身を見つめ直す「自己覚知」をしていくためにも必要不可欠なものとされています。
バイスティックの7原則とは？
「バイスティックの7原則」を提唱したのは、その名のとおりバイスティックさんです！
バイスティックさんはアメリカのケースワーカーであり、社会福祉の博士です。この7原則を援助の基本原則とし、介護や保育、様々な援助に必要不可欠な考えかたとして注目を集めました。
7つの原則
- 個別化（クライエントを個人としてとらえる）
- 意図的な感情表出（クライエントの感情表現を大切にする）
- 統制された情緒的関与（ワーカー自身の感情を自覚する）
- 受容（クライエントを受け止める）
- 非審判的態度（クライエントを一方的に非難しない）
- 自己決定（クライエントに自己決定を尊重する）
- 秘密保持（秘密を保持して信頼関係を作る）
①個別化の原則
クライエントが抱えている悩みや不安、福祉的な問題は人それぞれ。同じ悩みや問題は存在するはずもありません。年齢や性別、障害や疾病、生活歴など異なる環境の中で人生を歩んできたクライエントを、ワーカーが勝手にカテゴリ分けしたり分類してはいけないという原則です。
一人一人が大切な存在であるということを忘れずに、人それぞれに合わせた個別的な援助や関わりが大切ですね。
②意図的な感情表出
クライエントの自由な感情表現を認め、感情表現をよりしやすいように意図的に対応するワーカーの心構えです。
マイナスな感情は抑えられやすいものですが、全ての感情を「表に出して良いですよ」という姿勢で、クライエントが自身に向き合い、取り巻く環境へ視点を向けるように導きます。
安心して話せる関係・環境・雰囲気づくりを大切にしようという原則です。
③統制された情緒的関与
これはワーカー自身の原則です。
ワーカーはクライエントの感情に流されず、自分自身の感情を冷静にコントロールする姿勢を保持する必要があります。
クライエントの課題解決に向けて、感情を共有しながらも客観的に関わり、クライエントの感情に巻き込まれることなく関わっていきます。
これにはワーカー自身が自分の感情に目を向け、自己覚知することが大切です。
④受容
ワーカーの基本である「受容・共感・傾聴」の一つ。
クライエントの感情や態度、言葉などをあるがまま受け入れ、先入観で否定してはいけないという原則。
⑤非審判的態度
ワーカーの価値観や勝手な判断基準で、クライエントの行動や感情を評価しない原則です。
良し悪しをワーカーが判断するのではなく、「なぜそのような行動に至ったのか」「クライエントの環境はどうなのか」をしっかり見つめる必要があります。
ワーカーは、クライエントの生活歴や環境を分析し、クライエント自身が考えられるように中立的な立場でケアします。
⑥自己決定
クライエントの意志を大切に自己決定できるようケアするという原則です。
クライエント中心という考え方で、生活や人生、課題を考えていく根本にはご本人の判断が基本。
加齢・障害・疾病などによって自己決定がしにくい場合もあるでしょう。この場合、単純にご本人に決めてもらうだけではなく、選択肢の充実化、丁寧なリスクの説明、情報の提供などのケアも必要になります。
⑦秘密保持
クライエントの情報を同意なく漏らさないという原則です。
ワーカーはクライエントの人生に関わるため、多くの情報に触れたり様々な課題について知ることになります。誰しも自分自身の情報が知らずに漏れていることは良い気分ではありませんよね。
「秘密はしっかり守れる」とクライエントに感じて頂けることが、よりよい信頼関係の構築につながるはずです。
まとめ
「バイスティックの7原則」は信頼関係を構築するために重要な方法であり、ワーカーの基本的な姿勢のあり方です。
ワーカーとしてだけではなく、人間関係やコミュニケーションにも活用できるものです。
より良いケアを実現するために必要なワーカーの標準装備として、理解し身につけていきたいものです。
