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エコロジカル理論・アプローチ

エコロジカル理論・アプローチ

エコロジカル(ecological)とは、もともと自然と調和している様子という意味です。

福祉の実践の場におけるエコロジカル理論・アプローチは、人の弱さに原因を求めるのではなく、「人と環境」に目を向けると言う点に特徴があります。

1.エコロジカル理論・アプローチって?

エコロジカル理論・アプローチ(ライフモデル)は、生態学の視点をソーシャルワークに取り入れたものです。

人の抱える課題を、人と環境の交互作用によって生じてしまう不均衡、摩擦、不適応、抑圧が原因であると考えます。人と環境の双方に働きかけ、関係をより良くします。

人と環境の適応状態に目を向ける

人はそれぞれ異なる環境の中で暮らし、人と環境はそれぞれ影響を受けまたは影響を与え合っています。人と環境を切り離して考えてしまい、人だけを強めてもいずれまた環境との不適合が生じる可能性があります。

(川村隆彦.2011.ソーシャルワーカーの力量を高める理論・アプローチを参考に作成)

魚と池の物語

ある日、汚れた池で弱った魚を捕まえた。その魚を持ち帰り、きれいな池で餌を与えると、元気になった。そこで魚をもう一度、元の池に戻すことにした。その池が、汚れたままだったことにためらいはあったが、魚を池に戻した。

すると数日後、その魚は池の中で死んでいた。

出典:川村隆彦.2011.ソーシャルワーカーの力量を高める理論・アプローチ.

中央法規

この物語は、人を魚に、環境を池に置き換えられます。魚に働きかけたことで魚自体は力を取り戻しました。しかし、そのままだった環境に適応することが出来ず、再び力は弱体化しました。

魚を強くするだけではなく、環境である池が魚に優しいものになるよう変化させる必要があります。

2.課題はどのように発生するのか

人も環境も常に変化し、交互作用を行う中で課題が生まれます。人と環境が不適応状態になるとストレスが高まり、交互作用はマイナスに働いてしまいます。

交互作用はループ型

交互作用は「原因」&「結果」という単純な作用ではありません。原因が結果になり、逆に結果が原因になるループのように回る複雑な作用と考えられます。人は環境を活用し変化・成長することができ、自ら決定しストレスに対処する能力があります。特に、人の関係性・力量・自発性・自尊感情が、環境との交互作用によりストレスが発生していないか注目する必要があります。

生活にストレスをもたらすもの

  • 環境のプレッシャー
    自分の周りにあるサービス・制度・情報・人などの社会資源とつながることが出来ない。
    または社会資源に満足出来ない。
  • 人生の転換期
    学校・仕事・結婚・子育て・定年などの転換期に生じる達成するべき課題。
    新しい経験または経験を失う変化。
  • コミュニケーション
    友人や家族など、頼れる人が居ながらも機能していない状態。
    コニュニケーションによるストレスは別のストレスへの発展する恐れもある。

3.「人」と「環境」をどう見るか?

「人」は「環境」から影響を受け、同時に「環境」を活用することができます。基本的な「人」と「環境」の見方によって、交互作用がプラスに作用するよう変化を促していく必要があります。

人を見る4つの側面

  • 関係性
    家族や友人などとの関係性の有無はストレスへの対処能力に影響します。
    周囲の人との関係性の強弱は、ストレス対処能力の強弱に直結します。
  • 力量
    この力量とは、環境を変化させる力のことで、潜在的に備わっています。
    環境を変化させた成功体験で更に力量を得ることができます。
  • 自発性
    関係性と力量を得ることで、責任・決定・管理の自発性が生まれる。
    自発性の強化は、圧力から自分を守り、機能させることにつながります。
  • 自尊感情
    自尊感情とは自分に対する評価で、感情や行動に大きく影響します。
    自尊感情が人生の課題で不安定になることがありますが、関係性・力量・自発性で安定を保つことができます。
    逆に、自尊感情が安定しているということは、関係性・力量・自発性を確立できます。

環境を見る3つの側面

  • 社会的環境
    人を取り巻く家族・友人・グループ・地域・施設・学校・会社システム・制度・政策・法律・宗教など。
  • 物理的環境
    自然環境・交通・コミュニケーションシステムなど。
  • 圧迫・公害
    支配的集団からの抑圧。権力の悪用。無意識に作られた否定的な社会。 

4.情報収集と関わり

エコロジカル理論・アプローチのようなライフモデルは、情報収集(アセスメント)に重点を置きます。専門的な判断は収集された情報に基づき、その時その時変化するアセスメントに重点を置いています。

情報の収集・統合・解釈

  1. 情報の収集
    社会的環境(家族や友人など)と、物理的環境(自然環境・交通・コミュニケーションシステムなど)に対して、どの程度認知しているかを面接・観察・記録から収集。
  2. 情報の統合
    集めた情報を3つのストレスをもたらすもの(環境のプレッシャー・人生の転換期・コミュニケーション)の視点で分類し整理する。
  3. 解釈
    データを専門的に解釈する。

エコマップの活用

エコマップは、ご本人を中心に社会資源(家族・友人・関係機関など)との関係性を図にしたものです。

エコマップはご本人と描くことで、ご本人が自ら環境・関係性・社会資源などを確認することができます。

出典:ケアスタディbyみんなの介護求人

関わりは3つの方向へ

  • ご本人への関わり
    自尊感情を高めて、否定感情を和らげる。
    ストレスへの対処能力を高める機会をつくる。
  • 人と環境の接点への関わり
    交互作用の質に目を向ける。適応状態を維持できるように調整する。
  • 環境への関わり
    社会的、物理的環境に働きかけ、人的ネットワークや資源を拡大する。
    この関わりで関係性・力量・自発性・自尊感情を高めることができる。

まとめ

エコロジカル理論・アプローチの特徴はエコマップというツールを用いることで、アセスメントに強い点です。人と環境とで、どのようなストレスが発生しているのかが視覚的に整理することができます。人と環境の関係性は常に変化するため、合わせてエコマップも変化する。この流れをご本人と一緒に行うことが効果的とされています。

このアプローチは、課題となっている状況を理解する枠組みで、実際に働きかける場面においては様々なアプローチを併用することも想定されます。人に対する働きかけには「認知行動アプローチ」、環境に対する働きかけには「グループワーク」などを用いることもできます。

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