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辛い介護はもう終わり!家庭向け認知症の基礎知識

辛い介護はもう終わり!

家庭向け認知症の基礎知識

「高齢化社会」で「人生100年時代」と言われる日本では、認知症はとても身近なことになりました。また、2025年には「認知症700万人時代」になるとも言われています。

「認知症になったら終わりだ・・・」と思い込み、適切な医療とより良い環境作りが実現せず、家族が抱え込んでしまい、本人も家族も辛い介護生活を送ることも少なくないはずです。

そんな辛い介護生活を、少しでも穏やかな介護生活にするための家庭向け認知症の基礎知識についてまとめています。

1.ご本人を理解することがスタート地点

以前は、「認知症になると自覚がない。」とか「体験の全てを忘れてしまう。」と言われていました。

ですが決してそんなことはありません。確かに記憶の一部が抜け落ちてしまうこともありますが、しっかりと記憶されていることももちろんあります。「何かがおかしい・・・。」という違和感、これはご本人が一番感じていることなのです。

この「違和感」を家族や周囲の人に打ち明けられるかどうかは、心を許せる関係性にあるかです。

ご本人を理解し、否定したり怒ったりすることなく、とにかく聴いてみるという姿勢が大切です。

ご家族の心構え

ご本人を中心に考えること、「ご本人主体」を大切にすることです。ご本人の気持ちを無視したり、ご本人の意思を確認せずに勝手に介護サービスを決めてしまうなどの「ご本人不在」の状況にしないようにしましょう。

そして最も大切なご家族の心構えは一人で抱え込まないことです。

自動車の運転にたとえれば、家族であるあなたが助手席に座りイメージです。

あなたが運転するのではなく、認知症と診断されても、その人の人生を運転する(生きる)のはその人自身です。

あなたは、最初に横に座りその人の難しいところを見ていてあげましょう。

そうすれば、その人はきっとあなたに聞いてくるでしょう。

「どうすればよい?」と。

そうしたらあなたは「一緒に考えましょう」と言ってください。

出典:社会福祉法人東北福祉会 認知症介護研究・研修仙台センター.もしも気になるようでしたらお読みください

ご本人の不安を理解する

認知症と診断されたご本人には多くの不安が付きまとうものです。この不安が根っこにあることで、話し方や行動を自ら制限したり、ストレスの蓄積につながったりします。

  1. 「何も知らない人と思われる不安」
    「こんなことも分からないのか」と思われないようにするために、自分が疑問に思ったことを素直に聞いたり相談することができなくなります。
  2. 「何も出来ない人と思われる不安」
    「こんなことすら出来ないのか」「無能だ」と思われないようにするために、失敗やミスを隠したり、間違いや勘違いを認めることができなくなります。
  3. 「邪魔と思われる不安」
    自分が話すことで話が脱線したり長引くことで「あの人はいつも邪魔をする」と思われないようにするため、自分から発言することを抑え、新しいアイディアを出すことができなくなります。
  4. 「ネガティブな人だと思われる不安」
    「あの人はマイナス思考な人」と思われないようにするため、否定的な意味合いが含まれていることを発言することができなくなります。

2.認知症の基礎知識

認知症は脳の働きが低下するために、記憶が抜け落ちたり、物事の手順が分からなくなったり、幻覚などの症状が現れたりします。お歳を重ねることで出てくる「物忘れ」とは異なります。認知症と一言で言っても、原因・種類・症状は様々です。

認知症ってどんなこと?

認知症の原因の多くは、脳や体の病気によるものがほとんどです。

認知症の代表的な症状として記憶障害があります。加齢による「物忘れ」とは違い、認知症の場合は「一連の記憶が抜け落ちる」ことがあります。

例をあげると、何を食べたのかを忘れることは加齢による物忘れです。食べたこと自体を忘れて、忘れていることに対する自覚が乏しいのは認知症による記憶障害の特徴です。

記憶障害の他にも、感情の障害・幻覚や妄想・日常生活能力の低下などの症状があります。

認知症についてしっかりと覚えておきたいのは、たとえ認知症になっても穏やかな生活が出来るということです。

認知症の原因

原因の多くは病気によるものです。代表的なものは、脳血管障害による脳血管性認知症とアルツハイマー病によるアルツハイマー型認知症があります。他に、頭をぶつけたときにおこる慢性硬膜下血腫や脳腫瘍、栄養障害、薬の副作用なども原因になることがあります。

脳血管性認知症

脳の血管がつまったり破れたりすることにより、脳細胞に酸素や栄養が届かなくなります。そのために脳の機能が低下して発症するものを「脳血管性認知症」といいます。高血圧症や高脂血症などの生活習慣病のために、脳血管の動脈硬化が進み発症することが多いです。

アルツハイマー型認知症

脳の萎縮によって脳の機能が低下してしまう認知症です。脳の神経細胞の外側にアミロイドβというタンパク質が沈着した、老人斑というシミのような構造が見られます。

認知症の症状

認知症の初期症状は、単なる物忘れと区別がつきにくいものです。認知症かどうか不安を感じた場合は、すぐに専門家に相談しましょう。認知症は誰もが向き合うもので、特別なものではありません。過剰に怖がる必要もありませんので、隠したり一人で抱え込まないようにしましょう。症状には認知症の種類や進行、生活環境などにより個人差があります。

  1. 記憶の障害
    新しいことを覚えるのが苦手になります。過去のことは良く覚えていますが、最近のことの記憶が抜け落ちることがあります。忘れているということに自覚が乏しいのも特徴です。
  2. 意欲や感情の障害
    急に激しく泣き出したり、怒り出すことがあります。感情のコントロールが苦手になります。
  3. 幻覚や妄想
    「虫がいる」や「知らない人がいる」など実際には無い物がご本人に見える症状や、「誰かが襲いに来る」など実際には起こらないようなことを確信する症状です。
  4. 見当識障害
    慣れた道の帰り方がわからなくなったり、場所や今がいつなのかわからなくなる症状です。
  5. 日常生活能力の低下
    衣類の脱ぎ着が難しくなったり、食事や入浴が出来なくなったり、トイレに間に合わないなどの症状です。
  6. その他
    排泄物をいじったり、食べ物以外の物を口に入れる場合もあります。不安な気持ちから物を集めたり、何らかの目的により歩きまわることもあります。
症状が出たからといってその人自身が変わるわけではありません。症状は関わり方や環境を整えることで緩和します。
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3.認知症の症状に対する接し方

認知症になってしまったからと言って、「何もわからない人になった」と思うのは間違いです。今まで出来ていたことが出来なくなっていくこともありますが、周囲の接し方で様々な障害の程度を軽減できるということを知っておく必要があります。

物忘れ

「ご飯はまだですか?」

さきほどご飯を食べたばかりなのに、すっかり忘れてしまいご飯を待っているということはよくある症状です。ここで何が事実なのかを言い争うのではなく、ご本人に納得して頂くことが大切です。

「もうすぐできるのでお待ちくださいね」「作りますからお時間ください」と受け答え、まずはご本人の訴えを受け止めましょう。少し何か食べたい様子であれば、好きな果物やお菓子など差し支えない程度に食べて頂くことも良いです。

妄想

「財布を盗まれた!」

大切なものほど無くしてはいけないとしまい込み、しまった場所を忘れてしまう場合があります。決してご本人の物忘れのせいにしてはいけません。「それは困った。もう一度一緒に探してみましょう。」とご本人に協力しましょう。

家族が先に物を見つけた場合、「あなたが隠した!」と言われる可能性もあります。物を見つけた時には、そっとご本人が見つけられるように誘導してあげることも良いです。

日時や場所がわからない

「今日は何日?」

何日かを知りたいという背景には、今がいつでココがどこなのか分からなく不安でいっぱいということがあります。ご本人の不安な気持ちと同じ立場になり、カレンダーや時計を一緒に確認し、一緒に納得してみましょう。

大きめの日めくりカレンダーを使用する。
ご本人が見やすい時計を準備する(アナログorデジタル)。

人物のことがわからない

「あなたはどなたですか?」

言われたご家族もショックが大きいものです。別の人物と間違ってしまう場合もあり、こんな時は強く否定はせずにその人物になりきった方が良い場合もあります。一度その場から離れ、「ただいま、○○ですよ。」と言いながら、認識してもらえるように帰ってきたフリをする工夫も良いです。否定はせずに、まずはご本人の思っていることを受け入れましょう。

帰り道がわからなくなる

「家に帰ります」

ご本人が自宅に居ることを認識出来ずに家を出ていくこともあります。無理に説得せず、可能な場合は一緒に散歩をしたり、公園で一緒に休んだりすると気が晴れて自宅に戻れる場合もあります。

一人で出かけてしまうことがある場合には、玄関の戸にベルをつけたり、ご本人の衣類等に名前・住所・電話番号等を記入したカードなどを持たせたり衣類につけておくと良いです。

各地域には高齢者の見守りネットワークがあります。地域包括支援センター等に相談し登録しておくことで、自治体・保健所・福祉事務所・介護事業所・商店などが連携し、早期発見・保護・アフターケアをしてもらえます。

良く行く場所や馴染みの人にはあらかじめ事情を話しておく。
地域のネットワークを活用するため専門職に相談する。

4.ご家族の支えになるもの

認知症と診断されたご本人をケアすることは、ご家族の身体的または精神的な負担が伴います。誰かに話を聞いてもらったり、同じ状況にある他の人と情報交換してみることはケアを前向きに捉えるキッカケになります。

気になる人が居る時は

家族や地域の人で「あれ?」と気になった場合、良い場所を勧めてあげると不安感も軽減できるはずです。

各地域にある地域包括支援センターは、認知症に詳しい病院を紹介してくれます。そこで「認知症の心配があるので、専門の病院を紹介してください。」と言いましょう。

病院での検査でもしも認知症と診断された場合には、もう一度地域包括支援センターに行き「認知症と診断されました」と相談しましょう。

地域包括支援センターでは、ご家族の生活を支えるための様々な方法を提案してくれます。

不安がある時は

各地域には「認知症カフェ」があります。「認知症カフェ」とは、ご本人やご家族が気軽に参加できる集いの場です。そこには悩みを聞いてくれる専門職もいます。相談は無料です。100円〜200円程度のお茶・コーヒー代が必要な地域もありますが、それ以上のお金がかかることはありません。

地域によって色々な名称がつけられていますので、行政の高齢者福祉担当課や地域包括支援センターなどに電話し、「認知症カフェについて教えてください」と聞くと良いでしょう。

同じような状況にある家庭の話を聞いたり、自分の悩みを聞いてもらったりすることで、気づきや学びがあり、さまざまな工夫を知ることができます。

 

 

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