孤独に迫る!?死のリスク
孤独は1日1箱の喫煙に匹敵するほどの死亡リスク!?
そんなブリガムヤング大学の研究成果が、日本のコミュニティのあり方をさらに考えさせることになります。
ということで、『フクシる』に目を向けて頂き誠にありがとうございます。「孤独」に迫るリスクと、「お一人様」へのケアについてまとめてみました。
孤独は死亡リスクを高める!?
社会的に強いつながりを持っている人は、社会的なつながりが弱い人と比べて、生存率が50%高い!?イギリスでは孤独委員会を発足するほど、孤独は重大なリスクであると捉え、政府として戦略を策定する必要があると考えられています。
孤独のリスク
アメリカのブリガムヤング大学の心理学教授のホルト・ランスタッド氏は、148の研究について分析を行い、孤立していると感じることがどれだけ悪い影響を与えるのかを調べました。この研究結果では、社会的孤立の死亡リスクは、喫煙やアルコールの摂取に匹敵し、運動不足や肥満などの危険因子よりも高いことを示したというのです。
孤独が日常生活に大きく影響
「社会から取り残された」、「私は孤独だ」などと感じている高齢者は、お風呂に入ったりオシャレをしたり、食事をしっかり摂ったり運動するなどの日常の活動をする能力が低下しがちです。このような場合、死亡率が上昇することが6年にわたる調査でわかっている。また、ニューヨークの医師で研究者のドゥルーブ・クラーはニューヨーク・タイムズで、社会的に孤立している人には睡眠パターンの乱れ、免疫反応の異常、認知機能低下の加速が見られると指摘しました。
「1人が好き」も要注意
自分のライフスタイルにより、1人が心地よいと思っていても注意は必要です。ご本人の意志を尊重することも大切ですが、長期的に考えると「肉体的」「精神的」な影響は大きくなることも考えられます。「本人が決めたことだから・・・」と無関心にならず、「本人が決めたことだけど・・・」とさり気なく気遣う(ケア)が求められている社会になっているのかもしれません。
日本は孤独が増える国!?
日本の少子高齢化、人口減少、家族の在り方の変化やお一人様の増加により、今後ますます孤独が増える可能性があります。日本の変化を表す各数字には孤独リスクの影が隠れているように思えてなりません。たとえお一人様であったとしても、「孤独化」することなく、社会と強いつながりがあるお一人様として生きやすい地域づくりが重要になってきそうです。
日本の将来推計
孤独の対処方法
孤独を感じている、または社会的に孤立していると感じている人は、講義を受けたり犬を飼ったり、ボランティア活動や高齢者向けのグループに参加するなどの方法良いと言われています(もちろんご本人の意志を尊重しながらですが)。
弱いつながりでも幸福度を高める!?
孤独感を解消するのは強いつながりだけではない・・・。
これはブリティッシュコロンビア大学のジリアン・サンドストロームさんらの研究で明らかになったものです。
見知らぬ人と接するだけでも「つながり」は生まれ、さらにそれが孤独に対する治療薬になると言われているのです。
コーヒーショップ店員との会話で幸福度が上がる!?
サンドロームさんたちは、コーヒーショップに向かう人々に対し調査を行いました。
①半数は店員と社交的に会話をする
②残りの半数はできるだけ効率良くコーヒーを購入してもらう
以上の調査の結果、①の人々の方が、ショップでの幸福感&満足度が高くなったのです。こうした会話という小さな行動によって孤独を軽減するだけではなく、環境に対する満足度を高めることも明らかになりました。
スマホの画面に視線が行きがちな現代、または人と人との関係が薄れている現代に幸福度が伸び悩むワケも解るような気がします。
「向社会的行動」
「向社会的行動」とは、対人的なつながりを積極的に求め、促進する行動と言われています。まさにこの行動こそが、孤独に対する一つの予防方法または対処方法になる可能性が非常に大きいのです。
終末期のがん患者の方々を対象とした調査によると、日常的に他の患者と触れ合う患者の生存期間は、そうでない患者の2倍になり人とのつながりが孤独の治療薬と病的治療薬として有効である結果が出ています。
そして、こうした「向社会的行動」は伝染すると言われています。
「孤立」と「孤独」
「孤独」によって生じるリスクと、人との関わりが「孤独」の治療薬についてまとめてきました。「孤独」と似ている言葉に「孤立」がありますね。この2つの言葉の意味を整理しながら、「孤独」リスクに対する視点にも目を向けていきたいと思います。
①「孤立」とは
- 客観的概念
- 社会とのつながりが無いか少ない
- 本人の環境や状況を表す言葉
②「孤独とは
- 主観的概念
- 自分自身でひとりぼっちだと感じている
- 本人の精神的状態を表す言葉
③本人が望む「孤独」無し
「孤立」は周囲の人達が見た状況を表す言葉であることから、「孤立」だから必ずしも「孤独」を感じているとは限りません。ポツンとした一軒家で、周囲の人との関わりが無いように見えても遠方からの適切なケアがあれば幸せで自律した「孤立」生活を送ることが出来ます。
しかし「孤独」は精神状態を表し主観的概念であることから、何らかのケアが必要だと言えるでしょう。
孤独で循環器疾患の死亡リスク上昇
他者との交流が少ないなどの社会的孤立が、高齢者の循環器疾患による死亡リスクを高めることが東京都健康長寿医療センター研究所の研究から分かりました。
脳血管疾患や心疾患などの循環器の疾患は、日本の高齢者の死因上位を占めています。逆に言うと、社会的孤立の状況を改善することにより、疾患の低減が可能になってくると言えます。医療は単なる治療に着目するのではなく、社会的孤立や社会的処方などにも着目することが重要になってきます。
調査の概要
最初の調査は2012年に、東京都板橋区内の65〜85歳の高齢者3696名を対象に実施。
その後は2020年まで毎年、住民基本台帳を確認して死亡者を把握。厚生労働省のデータと突き合わせて死因を分析。
調査結果の概要
- 社会的孤立状態にたった高齢者:26.7%
- ①のうち調査期間に循環器疾患で亡くなった高齢者:5.2%
- 社会的孤立状態ではない高齢者の循環器疾患で亡くなった高齢者:2%
このような結果から、社会的孤立状態にある高齢者は死亡リスクが2.1倍高いことになります。
社会的環境の改善は最強の治療!?
これまでも紹介してきたように、人とのつながりを促進する行動は人から人へ伝播し、心身ともに良い影響をもたらすものです。
裏返せば、孤立状態にあると悪い生活習慣が残り、循環器疾患のリスクを高める可能性があると言えるでしょう。
誰もが誰かとつながり続けられる社会は、心理的状態を潤します。加えて死因上位を占めている循環器疾患の減少や、症状の改善につながる可能性も大いにあります。