『フクシとつながる、フクシでつながる。』・・・フクシを知って、ちょっとフクシを実践する、そんなユル〜クやってくフクシのサイト「フクシる」です。

ソーシャルワーカーのファシリテーション

ソーシャルワーカーのファシリテーション

ファシリテーションとは、とっても簡単に表現すると「「話し合いのテクニック」や「話し合いの進行」と言えるのではないでしょうか。

ソーシャルワーカーと呼ばれる専門職の皆さんは、様々な「話し合い」や「複数の人々で何かに取り組む」といった場面が多いと思います。このような場面でソーシャルワーカーに求められるのが「ファシリテーション力」。

本記事では、ソーシャルワーカーのファシリテーションについて、手法や注意点についてご紹介させて頂きます。

ファシリテーションとは

ファシリテーションとは、先にも述べた通り「話し合いのテクニック」や「話し合いの進行役」とイメージできると思います。

ですが、ソーシャルワーカーによるファシリテーションはもっと深い意味があり、広い役割があると考えられています。

ファシリテーションは話し合いの「支援」&「促進」

ソーシャルワーカーにおけるファシリテーションにおいては、ファシリテーションとは「複数の人の関係や連携・共同を支援する」ことと捉えることが出来ます。もう少しイメージしやすい言葉ですと、「人と人とのつながりを後押しする」「人と人との関わりを活性化するために支援する」と言えると思います。

①話し合いの支援・促進
②複数の人の関係や連携の支援・促進

ファシリテーターとは

ファシリテーションをする人のことを「ファシリテーター」と呼びます。

この「ファシリテーター」は助産師に例えられると言われています。出産において、「産む」ことをするのがお母さん、「産まれる」のは赤ちゃんです。助産師は「お母さんの産もうとする力」と、子供の「産まれてこようとする力」、この主役の2人の力を活かして無事に出産するまで後押しするのが仕事です。

最終的な目的を目指すために「後押しする」という点で、「ファシリテーター」と「助産師」は共通しているのです。

「ファシリテーター」は主役ではありません。話し合いに関わり合う人たちが主役です。

さらに、リーダーのように引っ張るイメージではなく、「背中を押す」というイメージの働きかけであることを意識しなければなりません。

参加している人たちの主体化が大切です。

まず話し合いとは何か

様々な話し合いの中でファシリテートするには、まず話し合いについてある程度整理しておくことが必要です。
会議・審議・相談・対話などなど。話し合いと一言で言っても、とても多くの呼び名が存在します。
ファシリテーションをするには、話し合いにはどのようなものがあるのか、そしてどういった話し合いが良いとされるのかを理解しておくことも重要と言われています。

話し合いの4タイプ

話し合いには目的別に大きく分けて4タイプに分類されます。
  1. 「対話」・・・探求や発見が目的で、一緒に考えるための話し合い。
  2. 「交渉」・・・利益を追求することが目的で、対話とは対照的。自分の利益を得るための話し合い。
  3. 「討論」・・・優劣を競うことが目的。対立している意見の話し合い。
  4. 「討議」・・・合意形成を目指すことが目的。より良い決定をするための話し合い。

ソーシャルワーカーによるファシリテーションにおいて、焦点を当てるべき話し合いは、「対話」と「討議」

ソーシャルワーカーは、社会課題の解決という大きな役割を担っているため、ファシリテーションは「お互いに支え合える関係の構築」を目指すものであり、その話し合いに重要なタイプが「対話」と「討議」の2つとなる。

話し合いの「場を作る」

話し合いには「場を作る」ことも重要です。「リラックスして話し合いに参加できる」「参加者が自分の思いを話すことができる」ような話し合いを目指すには、話し合いの「場を作る」というテクニックも意識しましょう。

・部屋の広さ  ・明るさ  ・窓や風景  ・室温  ・BGM
・植物など目線を向ける物  ・香り    ・換気  ・プライバシーの配慮

話し合いのための「オリエンテーション」

「オリエンテーション」という言葉そのものは、「太陽が昇る方角」に関連している言葉とされています。

ヨーロッパでは古くから、教会の祭壇を東側に配置するするようにしていたことに由来し、「方向づけ」という意味が含まれているとされています。

話し合いをスタートする場面でも、「何を、どのように、どこまで話し合うのか。」を明確にするために、参加者と「方向づけ」することが大切です。これが話し合いのための「オリエンテーション」です。

「オリエンテーション」では明確にすると良い4つの要素があるとされています。

①どのような状態を目指すのか

テーマに加えて、ゴールを示します。
どうなれば話し合いが終わるのかが分かるようにします。
旅行に向けた話し合いに例えると、「旅行のスケジュールを決める」とゴールを設定します。何を考えて、何を発言すれば良いかもはっきりしてきます。

②どのような手順で進めるか

話し合うことについて項目・順序を整理・確認します。
テーマを選定したり、グループ分けをすることも考えられます。
グループによる話し合いが行われた時には、全員で共有する時間もGOODです。

③役割をどうするのか

参加者している人に対し、何を期待しているのかを伝えます。
例えば、「Aさんには宣伝に関してアドバイスが欲しい」など伝えアプローチします。プレッシャーに感じないような配慮も大切にしましょう。
役割を明確にすることで、どんな視点で話し合いに参加するのか見えてきます。

④どのようなことを意識するのか

これは話し合いの場における「約束」のようなものです。
例えば「他の方の意見を否定しない」など、意識するべきことを決めます。
ちょっとした約束事で、時間管理がうまくいったり、参加者の振る舞いが変わります。

ファシリテーターの働きかけ

ファシリテーターが話し合いに対し、働きかけを行う際に大切なのは「後押し」する立場であるということです。主役は参加者であり、ファシリテーターの介入は少ないに越したことはないのです。最小限の働きかけで、話し合いの場を保つことがファシリテーションの基本とされている。最小限の働きかけにおいて、有効な技術をいくつか紹介します。

「問い」について考える

話し合いの場では、決めるのはファシリテーターではなく、もちろん参加者です。

ファシリテーターに求められるのは、「答え」ではなく、参加者が考えやすくなるような「問い」。

参加者に対し「問いかける」ことを意識し、合わせて参加者の意見を受け止める姿勢も重要とされる。

「問いかける」際には、「いかがですか?」など漠然とした問いかけになっていないか注意しましょう。「具体的には?」「仮に○○だった場合は?」など、参加者が深掘り出来るような「問いかけ」を考えましょう。

①話し合いのテーマに対する問い
②考えを深めたり広げたりする問い

話し合いのテーマに対する問い

話し合いのテーマが「○○について」や「△△の件について」では、参加者は何について話しあえば良いのか分からないままの状態で話し合いに入ってしまいます。

例えば、「楽しいこども食堂」という形にするのではなく、「楽しいこども食堂にするには?」と、問いの形にするだけで、参加者は考えが動き出すはずです。

そして「こども食堂はどうあるべきか?」と最終段階を考える前に、「自分がこどもの時に楽しかった経験は?」のように、実体験から話しあえるように促すことも大切です。そして更に「楽しかった理由は?」などの問いで、話し合いを深めていくことができます。

考えを深めたり広げたりする問い

この問いは、メンバーに対する問いです。ファシリテーター側が何も考えずに問いかけだけしても、参加者に強制的に考えさせる状態に陥ってしまいます。ファシリテーター側も頭を回転させ、参加者の思考を深めたり、話題の幅を広げるための工夫をする意識を持ちましょう。

徳田太郎・鈴木まり子.2024.ソーシャル・ファシリテーションを参考に作成

「見える化」する

テーマを設定し、約束事を決めて進める話し合いでも、気がつくとテーマがズレたり話し合いが噛み合わないこともあります。話し合いで発せられた言葉は、耳でキャッチしますが、目では見えないためとても頭で整理することが難しいです。

そこで効果的なのが、発せられた言葉を「見える化」するということです。「見える化」は、テーマに集中し、互いの意見を理解し合うことにもつながります。

「見える化」を考える①:何を「見える化」する?

「何を話しあうのか」「どう話し合われているか」の2つの「見える化」があります。

「何を話し合うのか」はテーマの「見える化」です。大きな紙に書いて掲示したり、プロジェクターで投影します。

「どう話し合われているか」は参加者の発言の「見える化」です。ホワイトボードや大きい模造紙等を活用し、出た意見をどんどん書き込んでいきます。

「見える化」を考える②:どのように「見える化」する?

「見える化」の基本は書くことです。ポイントは「参加者みんなに見える」「リアルタイム」ということです。

イメージはみんなのメモです。参加者みんなで作り、参加者みんなで見ることを意識しましょう。

まとめ

本記事にまとめました、働きかけやファシリテーションの方法については、目立った場所や公の場でいきなりチャレンジする必要はありません。友人同士や学校・職場、地域の集まりなど身近なところで焦らず一つ一つ試してみることをオススメします。

何か一つ試し、上手くいったら次のことをまた一つ試してみる。このような気軽な気持ちで取り組んだ方が、自分自身も楽しみながら実践できるのではないかと思います。

「主役は参加者」を忘れずに。

 

参考文献:徳田太郎・鈴木まりこ.2024.ソーシャル・ファシリテーション
「ともに社会をつくる関係」を育む技法

 

最新情報をチェックしよう!
>フクシとつながる、フクシでつながる。fukushill.com

フクシとつながる、フクシでつながる。fukushill.com

CTR IMG