認知症の方が前向きになれる対話法
「バリデーション」
注目を集めている認知症の方との対話法、「バリデーション」。
認知症の方が尊厳を回復し、会話が難しいと思われていた状態から一転し、会話をする例も確認されています。
認知症の方へ効果的とされている「バリデーション」にはいくつかのポイントがあるとされていますので、本ページで紹介したいと思います。
バリデーションとは?
「バリデーション」という言葉は介護業界や医療業界でも使われている言葉で、それぞれ違った意味で使われています。
バリデーションという言葉
英語では「強化する」「確認する」の意味を持ちます。
対話法「バリデーション」はアメリカのソーシャルワーカー、ナオミ・ファイルさんが考案しました。認知症の方々の感情に訴えかけることを重視し、共感することでコミュニケーションを図る技法とされています。
バリデーションの可能性
世間では「認知症になると喜怒哀楽の感情まで失ってしまう」と思い込んでいる人が多いのが現実です。ですが、たとえ認知症になっても最期まで感情面は残ることがわかってきました。
関西福祉科学大学の教授も「バリデーションの対話法を用いることで、認知症の程度に関わらず意思の疎通は可能になる。」と解説するほどです。
バリデーションの基本テクニック
アイコンタクト
相手の真正面に座り、膝がつく距離に近づいて同じ目の高さで見つめます。
自分自身の相手の話を聞く態度を整えることはとても大切です。
アイコンタクトは「私はあなたを受け止めますよ。」というメッセージを送ることにつながります。
リフレージング
リフレージングとは、相手の言葉を反復することを指します。
相手が話した言葉で、重要と思われる言葉を感情も反映させながら繰り返します。
例えば「私の家は貧しい家だった。」と言われた場合、「貧しい家だったのですね」と反復します。
ミラーリング
ミラーリングとは、自分自身が相手の鏡になるということです。
真正面に向き合って、相手と同じ動作、表情、姿勢をすることで、感情を分かち合います。
ただし、認知症の状態やミラーリングのやり方によっては、バカにされていると感じてしまうこともあるため注意が必要です。
カリブレーション
カリブレーションとは、共感することです。
相手の感情を観察し、自分の表情、姿勢、呼吸を一致させます。
同情したり、気晴らしを言ったり、元気づけ安心させようとすることと勘違いしないように注意します。
タッチング
話しながら相手の方に触れます。
「友のタッチング」という、肩を包み込むようにし上腕部へ撫で下ろすタッチは共感を表すのに効果的です。
過剰に触れることがないように注意が必要です。
バリデーションの基本的な態度
傾聴する
五感を駆使して、相手の言葉の奥にある感情に耳を傾けます。
単純に相槌を打つだけではNGです。
例えば、「部屋に誰かが居る」と話があった場合には、「どんな人ですか?」「どこにいますか?」など問いかけ、相手の方に見えている世界を教えてもらいます。
嘘をつかない・ごまかさない
介護の現場なのでは、「帰りたい」と言う人に対し「お茶でも飲みましょう」とごまかしたり、「もう少しで迎えが来ますよ」などと嘘をつき、認知症の方の気持ちを抑えがちになることもあります。
それでは本当の信頼関係は築けません。自分も同じように対応されると気持ちの良いものでは無いはずです。
共感する
相手の感情を観察し、声のトーン・話すスピード・気持ち・表情・呼吸のペースを一致させます。
表面的にただ話を合わせるのは、共感ではなくごまかしになってしまいます。
評価しない(受容する)
たとえ認知症と診断されても、ご本人の行動には必ず理由があります。
カリブレーション(共感)やミラーリング(相手の鏡になる)を通して、認知症の方の感情を受容します。
誘導しない(ペースを合わせる)
食事を例に上げると、認知症の方が食べたくないのに、ケアする側の都合で急がせたり無理に食べさせたりしがちです。
ご本人の呼吸とペースを合わせて関わることが大切です。
急がせたり無理に何かをやらせたりすると、ご本人のストレスになり症状が悪化する場合もあります。
まとめ
バリデーションは、ご本人の感情表出を促したり、課題解決を支援しることを目指すための対話法です。
認知症の方に関わる人たちは、人生の最終段階に近づくステージを迎えた認知症の方々の本当の気持ちを受け止め、大きな喪失感を抱いていたとしても、人生の価値を確認できるようにケアすることが求められます。