ジェノグラムの書き方と活用【複雑な関係までわかりやすく】
ジェノグラムは情報を収集し、家族の特徴をわかりやすく把握するための図式化された表記方法です。家族の形はそれぞれ異なり、同じ家族は一つとして無く、家族によって援助の形も異なります。本ページでは、援助の際に重要となる多様な家族関係を視覚化するためのジェノグラムについてまとめてみました。
ジェノグラムって?
ジェノグラムとは
ジェノグラムは「家系図」とは異なるものとされ、家族構成や家族間の関係性をわかりやすく視覚化したものです。基本は少なくとも3世代分を、記号と線でマッピング(図式化)し視覚的に把握できよう表したものです。考案者は、アメリカのソーシャルワーカー、アン・ハートマンです。
ジェノグラムの必要性
さまざまな分野において、クライエントを支援していくためには、家族や関係性について知ることが重要です。しかし、家族の形や関係性は多様であり、常に変化するものです。 家族をわかりやすく、正しく知るためには、ジェノグラムで視覚化することが有効とされています。
ジェノグラムの原則
ジェノグラムの作図方法には実は決められた統一ルールがあるわけではなく、自己流で描いている方も少なくありません。本ページでは、主流となっている描き方を取り上げ、わかりやすく情報をまとめ、わかりやすいジェノグラムが書けるようまとめています。
ジェノグラムの記号
男女と本人の記号
お亡くなりになった方
ジェノグラムの婚姻関係の2つの書き方
婚姻関係の描き方には図のように2つの書き方があります。
図のようにAの横一線で結ぶ書き方と、Bの1段下げてから結ぶ書き方があります。良く見かけるのはAかもしれませんし、Bは複雑な印象を受ける方もいらっしゃると思います。
しかし、本ページではBの書き方で図式化していきます。 その理由は、離婚や再婚が繰り返されるご家族を図式化することも想定しているためです。
1段下げて結ぶ書き方は、複数回の離婚と再婚があったとしても、問題無く図式化することができます。 横一線に結ぶ書き方では、初婚と再婚までは問題なく書くことが出来ますが、2回目の再婚は書きにくくなってしまいます。
離婚は二重斜線、同居のご家族は点線で囲みます。
婚姻関係の描き方
婚姻関係の作図
夫を左、妻を右に配置します。 婚姻届を提出している場合は実線、内縁または恋愛関係の場合には点線で結びます。
離婚は2本の斜線を、別居の場合は1本の斜線を横線上に書き入れます。
発生年月日については、記載しない場合も多いですが、記載することでご家族の見立てに役立つことは多いものです。
離婚&復縁の作図
離婚の場合は2重斜線で書き表しますが、同一人物との復縁は2重斜線にさらに逆の斜線を重ねて書きます。
再離婚や再復縁の場合には、その回数に応じて斜線の記入が増えていくことになります。
親子関係の書き方
親子関係の作図
親子関係の作図は、父母の下に縦線を加えて子を書きます。婚姻関係の作図の原則に沿って、父を左に、母を右に書きます。
再婚等がある場合、男女ともに左側が古い関係、右側に新しい関係の人を書いていきます。
親権について
親権者を表す記号は無いとされ、離婚を表す2重斜線の位置で表すと良いとされています。
親権者が母の場合は父側に2重斜線を、親権者が父の場合は母側に2重斜線を書き表します。
子どもの記号一覧
複雑な家族関係の作図
複雑な家族関係のジェノグラムを書く場合にも、「男性を左で女性を右に」「左側が古い関係で右に行くにつれて新しい関係」「年長の子を左に右側に行くにつれて年少の子」という原則を守りながら作図することができます。
まとめ(ジェノグラム活用と留意点)
ジェノグラム作成日を記載する
家族や関係性は常に変化するものです。正確と思っていたジェノグラムは、いつの間にか不正確になっていることもあります。
ジェノグラムの作成日を記載しておくことで、時間の経過や、年齢の変化、ライフステージの変化などが考えやすくなり、支援を検討するうえでもメリットがあると思われます。
ジェノグラムの作成日は必ず記載するようにしましょう。
文字の書き込みは適度に活用
ジェノグラムは、家族の関係や状態を視覚でわかりやすく捉えられることが利点とされます。
文字の書き込みが多くなり過ぎると、ジェノグラムの利点が失われてしまう場合があります。文字を書き込み情報を補足することも重要ですが、適切な取捨選択により情報をまとめるよう心がける必要があります。
参考文献:子どもの虹情報研修センター.手に取るように家族がわかるジェノグラム描き方と活用のコツ(第2版)